マラソングランドチャンピオンシップ

すごかったMGC。僕は現地勢でした。
男子。
設楽選手がスタート直後から飛び出す。
本人も事前会見できっぱりと言っていたが、まさか本当にやるとは。
かなり前から予想はできた。
「自分らしい走りをする」「みんなを面白くさせるような走りをする」「MGCも五輪もひとつのレース」こんな言葉が近年ではありました。
顔に似合わないエンターテイナー。GCのような走りもできますし、後ろから行くこともできる。MGCはMGCだからこそ、ああいう走りをしたんだと思います。
MGCや五輪も一つのレースだと考え、この走りで自分は勝てる、この走りで勝つしかないと考えていたんでしょう。
客観的に見れば、30℃近い暑さの中、単独層で3分ギリのペースは無謀。ただ本人は自分を信じて、自分らしく走りましたね。今後100年記憶に残る、伝説の走りになったと思います。
どこかの記事で異端児と呼ばれていました。本人はどう思うかはわかりませんが、異質な存在になってきましたね。彼がいるから、今の日本のマラソン界は面白いんだと思う。今後ももっともっと彼らしく暴れて欲しい。
第2集団は一塊。
14'56で最初の5kmを入った設楽選手に対し、15'56~15'58の通過。この5kmは下っている。ここは佐藤選手や宮脇選手が引っ張っていましたかね。
僕的には、もっとスローになってもおかしくなかったと思っています。ただこれ以上遅いと設楽選手に逃げられる。最低限のペースでしょう。実際、どこかで設楽選手を意識している部分があったと思う。
10kmは31'36~31'38ぐらい。この5kmが15'36~39ぐらい。下りを抜けたことを考えれば、しっかりとしたペースに上がっている。
15kmは47'12~47'14ぐらい。この辺りから早くも服部選手らが集団の前。山本憲二選手や神野選手も集団の前に動き、神野選手が13km手前で思い切って仕掛けるシーンも。結果この5kmが15'35~36ぐらい。ペースは下がらなかった。やはりスローペースではなく、暑さを考えると若干速いぐらい。この辺りから井上選手が若干遅れ、福田選手、村澤選手、今井選手、木滑選手らが第3集団に。
20kmが62'00ぐらい。設楽選手は60'04。約2分の差。この5kmが一気に上がっているんですよね。この5kmをぐわっと上げたのが鈴木健吾選手。めちゃくちゃ強かったですよ。
やはり鈴木選手は天才だと思った。マラソン、長い距離の素質がずば抜けている。ホクレン10000mで28分台でトップに立った時、これはMGCかなりやるなと思いました。このメンツで14'48に上げる度胸。しかも余裕を持ちながら。相当な才能だと思います。
鈴木選手についていったのは中村選手、服部選手、大迫選手の3人。第3集団が24~25秒離れ、橋本、大塚、中本、藤本、上門、竹ノ内、河合、堀尾、佐藤、岡本、高久選手。
ハーフ通過は設楽選手が63'27、第2集団が65'28。
25kmは設楽選手が1°15'33。この5kmが15'29かかり、若干スピードが鈍る。2集団(鈴木、大迫、中村、服部選手の4名)も少しけん制し、この5kmが15'23。20~25kmの最速ラップが実は唯一14分台の藤本選手。一気に鈴木選手ら第2集団に追いつく。
第3集団は中本、藤本、竹ノ内、大塚、橋本、佐藤選手。中本選手のこの5kmが藤本選手に次ぐタイムの15'06。ここから、全マラソンファンが震える中本選手の追い上げが始まる。
そして30km。設楽選手の30kmは1°31'43。この5kmは16分以上かかってしまう。
鈴木選手ら第2集団は1°33'00。中本選手ら第3集団は1°33'12前後。
第2集団が見える位置で第3集団が走るが、中本選手がじわじわと差を縮め、33kmでは第2集団を取り込み集団のトップへ。これが日本の誇る最強ランナーの一人、中本健太郎。
ロンドンやモスクワを思い出させる後半の力強い走りはめちゃくちゃ鳥肌が立ちました。
35km。設楽選手は1°48'37。第2集団は1°49'12。第2集団は大迫、服部、中村、鈴木、中本、大塚、橋本、竹ノ内、藤本の8人。勝負どころを前にこれだけ強いランナーが走っていること自体、とんでもないこと。日本マラソン史に残る名場面だったと思います。
37km地点でついにトップ交代。ラスト5km。これは坂を我慢して、ラストのスプリント勝負か?と思われましたが、坂の手前で不意をついた中村選手のスパート。
これぞ伝家の宝刀ロングスパート。高温多湿のマラソンの終盤で、ここまでの切り替えができるのは世界中見渡してもそういないと思います。これで一気に集団がばらける。
追うのは服部選手、大迫選手。服部選手は2位確保のため、大迫選手を意識。一度大迫選手が前に行ってからも冷静に力を温存していました。
対する大迫選手は、懸命に腕を振り、中村選手に追いつく。これは大迫選手貰ったか!??と思われたが、中村選手が再スパート。これは恐れ入った。強すぎる。
服部選手はラスト数百メートルで大迫選手を逆転。終始先頭付近を走りながらのこの走り。本当にタフだった。まだまだ若く、マラソンの経験が浅いとは思えない。いつも記事では謙虚な姿勢だが、堂々と戦った。
いつも冷静な大迫選手が2位ではなく1位を狙いに行ったのは、MGCがそうさせたのではと。プレッシャーと真っ向勝負していた印象。他の選手のスパートに逐一対応してしまったとあるが、それがトップのあり方だと思います。男らしく、そのレースを全力で戦っていたと思います。僕はなんとか大迫選手に3枠目で走ってほしいです。
4位には大塚選手。今回は伏兵の検討と言われていたが、とんでもない。
昨年の北海道マラソンは12分07秒でMGC。今年の寒い東京マラソンでも12分台。
ハーフは今年の丸亀を62分台。10000mに至ってはリレカで28'25、GGNで28'28、九州実業団で28'47、ホクレンで28'37。5000mも金栗で13分台で走っています。
タフな選手で、1200km走りこんだこともあるそうです。走りこみながら、怪我をせず、安定したパフォーマンスを出せて、13分台や28分前半のスピードも維持している。
これだけの選手は世界でもなかなかいない。将来は日本のエースになると思います。
5位に橋本選手。箱根の付き添いエピソードが先行していますが、本当に強くなりましたね。積極的に集団の前に出て、このメンバーに臆さず勝負していた。アップダウンにも強く、もしや?と思わせました。6位に竹ノ内選手。ツイッターでは練習メニューをアップしていますね。直近で故障もあったらしいが、うまく疲労が抜けて合わせられたんでしょうか。7位に鈴木選手、8位に中本選手。9位には藤本選手となりました。

中村選手のスプリット。
5km 15'58
10km 31'37 15'39
15km 47'13 15'36
20km 1°02'00 14'47
ハーフ 1°05'28
25km 1°17'23 15'23
30km 1°33'00 15'37
35km 1°49'12 16'12
40km 2°05'10 15'58
フィニッシュ 2°11'28 後半ハーフ 1°06'00 ラスト2.195km 6'18


女子。
序盤は一山選手が積極的に飛ばす。
最初の5kmを16'31。気温を考えれば、男子の設楽選手並に速い。
男子と違い、これは予想外だった選手が多いと思います。かなり判断に迷うところ。
女子は本命不在のように僕は思っていました。どの選手にも可能性があったと思います。
松田選手が思い切って自重。これも勇気がいる行動だったはず。
しかし5kmは16'42。上位とそこまで変わらず、この秒差だったら、一人で走るよりも集団の方がリズムをとれたかもしれない。もちろんたらればなんですけど。
10kmは33'34。この時点で松田選手は第一集団に追いつきました。
一山選手はそこから少しづつ失速し、前田穂南選手が集団の前へ。
15kmは50'40~41。前田選手が他の選手を気にするそぶりもなく、引っ張る。
17kmで前田選手が単独で抜け出し、15km~20kmを16'47で通過。
鈴木選手が唯一1秒差で追いました。
前田選手のハーフの通過が71'05。鈴木選手が71'14。3番手には小原選手があがり、71'23。ここから上位3人の順位は変動しない。
前田選手は20km~25kmもただ一人16'41、全選手中の最速ラップを刻む。
35km~40kmが18分かかり、アップダウンに課題が残りそうなラップでしたが、この暑さの中、2時間25分15秒で優勝。2位の鈴木選手には4分弱の大差をつけた。
鈴木選手はラスト2.195kmが9分近くかかってしまったが、なんとか2位確保。小原選手は最終的に鈴木選手に4秒差まで迫るも、堂々の3位。
女子は序盤のハイペースが影響し、少し荒れたレースになったでしょうか。8人しかでないマラソンだったのも大いにあると思う。もし、もう少し人数が多いことで一山選手や前田選手の第一集団、松田選手や野上選手の第2集団にわかれていたら。また違う展開になったはず。五輪や世陸で8人というレースはほぼありえないので、女子はMGC関係なく、参加人数を増やせていたら・・・。
松田選手はタイムを見ても優勝候補だったと思いますが、少しスピード感がなかったでしょうか。じっくり走りこんだことが影響していますでしょうか。

前田選手のスプリット。
5km 16'31
10km 33'34 17'03
15km 50'40 17'06
20km 1°07'27 16'47
ハーフ 1°11'05
25km 1°24'08 16'41
30km 1°41'20 17'12
35km 1°58'53 17'33
40km 2°17'19 18'26
フィニッシュ 2°25'15 後半ハーフ 1°14'10 ラスト2.195km 7'56

このMGCで東京五輪の選手がほぼ決定。あとはファイナルチャレンジ。
ファイナルチャレンジは冬場のレースなので、五輪の選考にはあまり適していない気がするが、以前までは冬のレースで決めていたので。ファイナル対象のレースが盛り上がらないのもそれは良くない。
今回のMGCはかなり盛り上がったし、成功だと思います。やはり一発勝負というのは大切。今後はいろんな課題がまた出てきそうなので、またその時に考えて欲しいですね。

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